完璧な昼夜逆転、「釣りバカ日誌」初話

釣りバカ日誌 [DVD]

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昨晩は、図書館に行ってからもう少し勉強しなければと思いファミレスへ。
午後10時ころからファミレスに入り、飯を食い、それから自習をする。
主にフーリエ変換のお話である。
フーリエ級数をT→∞として「非周期的なフーリエ表現」を導いたが、
その際のf(t)とF(ω)の関係は、俗にいう「フーリエ変換する」という言葉で結びつけられている。


そんなお話を多少やりながら、4章を終わらせるつもりでファミレスで徹夜も辞さないという気持であったが、
午前四時になると、私以外誰もいない田舎のファミレスでたった一人お勉強しているのが
本当に孤独の極みのように思い、いいところで帰った。


しかし午前四時の世界というのは、やはり世の中の厳しさを物語っている。
午前四時に起きて新聞配達、コンビニの仕入れのトラックの運転手、コンビニ店員・・・。
どれもきつい仕事だと思った。


そんなことを思い、なんだか世の中おかしいように思えた。
皆が皆幸せに生きる方法というのはないものかと思った。


それで家に帰って「釣りバカ日誌」を見る。
生まれて20年と少し生きてきたが、この映画をまともに見たことはなかった。
けれど、そこには古き良き人情味にあふれた日本人が描かれていた。
他人を否定することでのし上がっていこう考え方ではなくて、
和を尊び、皆を幸せにしようという「浜ちゃん」タイプの人間はもはや絶滅危惧種かもしれない。
初話では「スーさん」(社長とは知らない)に、「浜ちゃん」が「笑顔、笑顔」といっているのが
とても印象に残った。
確かに「笑顔」が大切である。
それは例えば一人ファミレスで勉強して、多少知識を得て、いつか他人の前でふんぞり返る準備をしよう
というような私とは、まったく別次元のことだと思った。
私はどう生きればよいのだろう。


工学部ヒラノ教授

工学部ヒラノ教授


ファミレスでは、読書もした。
図書館で借りて帰った簡単な通俗本をさらっと読んだ。
工学部というところがどんなところか書いている。


ロシアが20世紀半ばにスプートニクを打ち上げたが、あれで西側諸国は科学技術が東側よりも
劣っているのではないかとショックを受けたらしい。
俗にスプートニクショックといわれているようである。
それでその頃、東工大などの工科系の大学は入学者を増やしたらしい。
とにかく関わる人間を増やして、大量のマンパワーを注ぎ込み、東側諸国に一太刀返したいという
政府の意向を受けて、であろう。


その頃、著者は学生であり、紆余曲折の末、スタンフォードの博士を貰い、
新設の筑波大学に務めはじめたのだが、工学部というところがどういうところなのか、
というのを体験をもとに綴った本である。


まずはエンジニアは「時間に遅れるな」である。
チームでエンジニアは仕事をするから時間に遅れてはならない。
また、納期は必ず守り、98%の仕事を100%にするのにかかる時間が
それまでの2倍かかるのであれば98%で納品せよだとか、そのようなローカルルールについて
説明している。
また学生を馬鹿にしてはいけないだとか、一度引き受けた学生はよく面倒を見なければならないだとか、
工学部特有のルールを説明している。


数学や文型の教授と比較して、数学者は学生の研究にケチをつけたり、ろくに世話もしなかったりするのだが、
しかしエンジニアの世界は違って、一人で結果がでるなんてことはあまりないので、
とにかくチームを大切にするようである。


確かに工学部には、そういうおせっかいな雰囲気があるし、さらには納期、納期と
まるで労働者のような教育をするわけで、著者が言うように「カルチャーのない」ところであるのだが、
そこで長年生きてきた著者の体験を、しげしげと読んだ。


好むか好まないかといえば、私はその空気が正直大っきらいなのであるが、
工学部に何年もいたり、それ以外の世界が田舎なのでないわけで、
この世界で当面生きていくほかないのだが、正直この本を読みながら多少うんざりした。



将棋はレート1000を越してから、落ちるのが嫌でしばらく指していない。
そのうち指すだろうが、しばらく指さないと、また感覚が悪くなっているだろう。
しかし、ファミレスで行くあてのない勉強をしてみたり、
工学部というところについて語られた本を読んで、なんか合わないなーと思ったり、
気が滅入るようなことをした後に、「釣りバカ日誌」を見るとなんだか救われる気がした。


社長の「スーさん」は、会社では気難しい顔をしているし、話し方だって威圧的である。
工学部の連中のどちらかといえば「浜ちゃん」よりも「スーさん」の生き方にそっくりで、
イライラさせられる仕事を押し付けられて、しかしその中で自己の優位性を保ちたいがために、
結果の出ていない他をみて、けなしたりしなければ精神的にやっていけないのだろうが、
(そういう助教と私は一戦やりあったことがある)
それゆえにやはり「釣りバカ日誌」をみると癒される。





工学部の教え七カ条

第1条 決められた時間に遅れないこと(納期を守ること)

第2条 一流の専門家になって、仲間たちの信頼を勝ち取るべく努力をすること

第3条 専門以外のことには、軽々に口出ししないこと

第4条 仲間から頼まれたことは、(特別な理由がない限り)断らないこと

第5条 他人の話は最後まで聞くこと

第6条 学生や仲間をけなさないこと

第7条 拙速を旨とすべきこと