追悼 ビッグフォー

ある居飛車ビッグフォーと振り飛車銀冠の中盤戦。


ビッグフォー
「さすがに銀冠とビッグフォーでは堅さに違いがあり過ぎる。
 儂が完成した時点で、勝利はほぼ8割確定している」


振り飛車銀冠
「では中盤の捌きの妥協案として、私が飛車を二つ持ち、
 あなたが角の二つ、銀を一つ手にするという条件でよろしいでございますか?」


ビッグフォー
「二枚飛車か・・・。
 さすがにこの儂といえど二枚飛車はちと苦しいが、今回は特別サービスで許してやろう。」
 (馬鹿め、いくら二枚飛車といえど儂を崩すのは並大抵のことではない。
  多少の荒捌きは居飛車穴熊の常よ!)


振り飛車銀冠
「ではその条件で折り合いをつけましょう」
 (この木偶の坊め、お前にはこの中盤戦の結果としてその条件しか見えていないのか。
  お前が見越している数手後を私は見通している。
  ビッグフォーと銀冠の玉頭での歩の突き捨て合いの果てに、私には桂馬の打ち場所ができる。
  そしてお前が納得した条件の上に、桂馬が手に入ることは確定的だ。
  読みが浅いお方だな!ふはははは!
  本当の交換条件は、飛車二枚、桂馬一枚、手番と角二枚、銀一枚だろう。
  どちらが損をしているのかな?)


ビッグフォー
「では終盤戦に参ろう」
 (居飛車穴熊、ましてビッグフォーとほぼ同等に捌いて勝利が得られると思うなよ)


終局


ビッグフォー
「ぐはぁ!貴様、図りおったな!」


振り飛車銀冠
「図った?とんでもない。まず私と貴様では違いがあるのだよ」


ビッグフォー
「違いだと?捌きの交換条件も同等だったが玉形の差ではむしろ儂のほうが勝っていたはずだ!」


振り飛車銀冠
「その交換条件は貴様が読んだのか?
 貴様には二つの不安要素があったのだよ。
 まず第一に銀冠からの端攻め。それから第二に貴様の操り主の棋力だ!」


ビッグフォー
「何だと?お前はそんなメタ的な会話までしてしまうのか!」


振り飛車銀冠
「メタ的かどうかはさておき、貴様の操り主の棋力からして、
私の端攻めに動揺して、焦ったなんの工夫もない平凡な手を指す可能性は非常に高いのだよ。
穴熊は端攻めに弱いし、貴様の操り主は、もしかして端攻めの対応はあまり分かっていないんじゃないか?
銀冠穴熊にしたら端攻めにも強いというくらいの知識しかなくて、実際の対応というのができない。
玉頭の歩の突き捨て合い、それから端攻め、その後にできた貴様を滅ぼすのに十分な桂馬の打ち込み。
これだけそろえば貴様の操り主を混乱させ、焦らせるのに十分だろう」


ビッグフォー
「Jesus fucking Christ・・・」



おそらく生涯で初めてビッグフォーを組んだのだが、
銀冠に負けてしまった。
ビッグフォーを組んでから中盤の捌きはかなり油断していた。
こんなもんで勝てるだろという気持ちになった。
どんなに有利に見えても油断は禁物だ。中盤戦の捌きでも妥協しなければよかった。
ごめんね、ビッグフォー。