天下泰平

ESを出せなかったわけだけど、それによってこの先の予定というのも白紙になった。
とはいっても送るつもりだったのは2社であり(どちらも思い入れがあった)、
予定がとてつもなく入るわけではないのだけど、多くが無駄になったのは確かである。


ただ、試験の時から、「次はあのレポート書かないと」とか「次はあの説明会に行かないと」とか、
連続的に「すべきこと」が存在していたので、進級試験も不出来な結果に終わったし、
とにかく3月の成果というのは全くないのにも関わらず、この「なにもない」という感覚は私を安心させる。
試験中から、柄にも合わない「次は何かしなきゃ」に振り回されすぎていたようである。
試験終わって疲れていたなら、グーッと2週間でも何も考えないで過ごしたほうが、
その後の2週間もしかしたら活発になれたかもしれない。過ぎたことだけど。
あの頃は、「試験終わった!でも就職活動しないと!」という気持ちに随分支配されていたように思う。
昨年の夏休みのほうが、スウ氏のベクトル解析したり、砂川先生の電磁気学の入門書読んだり、
勉強のほうははるかに進んだように思う。
今回の春休みは、なんというか慌ただしいような気持ちに支配された癖に、成果なし、という可笑しな結果になってしまった。
駄目人間を思いっきり開花させたのって、本当に半年ぶりだろうから、溜まっていたものはあるのだろう。


そのフリーダムで、ニートの気持ちも分かろうか、というような精神状態で、昨日はラーメン屋に行き、
それから「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」を見に行った。



何か政治の本でも読んでいれば、もっと楽しめるのかもしれないけど、サッチャーとかレーガンの時代の話は、
面白そうではあるけど、全然知らない癖に見に行くのだから仕方がない。
サッチャーは、「決断して推し進める」タイプの政治家で、イギリス初の女性首相らしい。
炭鉱労働というのが、非常に効率の悪い労働であり、それを国営の企業でやるのはいかがなものか、
ということで炭鉱を閉鎖した。
これには炭鉱で働く労働者たちが黙っておらず、大規模なデモにまで発展するわけだけど、
一方で彼女は「一時的に苦い思いをする人たちもいるけれど、子供の世代には感謝されるような正しい判断だ」という。
政治家は大局に立って、時には切り捨てを行わなければならない。


作中で描かれているのは、決断をしない男たち。妥協にまみれる男性政治家。
一方で、彼女は「誰かが決断しなければならない」ということで、今の大阪知事みたいな感じなのだろう。
こういう人たちって一体どういった精神状態なのかしら、と私のような洞穴暮しのようなことをしている人間には、
想像のつかない連中であったが、例えばサッチャーの中身は案外繊細であったらしい。
晩年には(とはいってもまだ御存命であるが)、認知症というより、あたかも身の回りの事実を受け入れたくないための、
精神異常を引き起こしているようである。
これまで自分が苦渋の決断を強いられてきた長い期間というのは、一体何だったのか。
彼女は10年にわたって、胃を絞られるような「決断」を下してきたのだが、最後には側近が彼女から離れていくようになる。


しかし、東西冷戦、ベルリンの壁崩壊など、今の時代から見たらロマンあふれるような派手な時代に私は興味がある。
例えばリヒテルなんかが、真っ赤で目にしみそうなカーペットの上で、大きなグランドピアノを弾いているようなイメージがある。


話は変わって、来週の月曜日に配属される研究室が決定するようである。
どこになるのかは、試験の結果が割るために未定であるが、それでも新しい人間関係も始まるのかもしれない。
昨日は映画を見てから帰るときに、異常な孤独感にさいなまれた。
友人なんて一切いなかった頃の孤独感と同じものだった。
馴染みの友人が引っ越していったのは、後になって精神的に地味に効いてくるものらしい。
それでもまぁ、なんとか前を向いてやっていかないとなぁ。
今年の抱負は「色々なものを見て、色々な人と会う」ということなんだから。
それでも来週から学校が始まるようなものだろう。春休みよ、さらば・・・。
でも「色々なものを見る」というのは、案外やったのではないかと思う。
見聞は広めたかしら。